永遠の謎

「さてみなさん、今日は簡単な実験をしますよ」
「先生、どんな実験ですか?」
「宇宙と生命の誕生を実際に密閉容器の中で観察するものです。それでは容器をしっかりと密閉してください。次にエネルギーをゆっくりと注入します。それからスイッチを入れてください」

「この宇宙は地球を中心として太陽や月が回っていて、さらにその外側を惑星や星座を形作る星々が回っているんだ」
「いや、地球ではなくて太陽が宇宙の中心だ。これだけたくさんの証拠があるんだ」
「何を言っているのだ。神がお造りになったこの地球が宇宙の中心にないはずがない。おまえは神を冒涜しているのか」

「そろそろ実験は終わりですよ。片付けを始めてください。スイッチを切って容器を密閉したまま前に持ってきてくださいね」

「教授、ちょっとこれを見て下さい。もしかして……」
「間違いない、宇宙が収縮を始めたようだ。山根君、お手柄だぞ」
「いえ、先生のおかげです。それにしても大変な発見ですね」
「ああ、これで宇宙の終わりを巡る論争に終止符が打たれるだろう」
「でもいまだにビッグバンのきっかけは解明されませんね」
「高エネルギーが一気に解放されたことは間違いないんだが、どこからそれほど大きなエネルギーが生まれたのか合理的な説明ができない。世界中の科学者が頭を抱えているのはそこなんだ。いくつもの仮説があるがどれも矛盾を抱えている」

「それでは今日の授業はここまでです。たくさんの光る星とそこでうごめく生物が見えましたか?次の授業までに今回の実験のレポートを提出してください。枚数は二十枚以上三十枚未満とします」
「今日の実験でできた模擬宇宙はどうなるんですか?」
「あれはしばらく冷まします。そうするとエネルギーの固まりに戻るんです。そして次の実験でまた使うんですよ。それではさようなら」
「さようなら」
……
「私たちの科学力でも宇宙の誕生のメカニズムは解ってもそのきっかけや終わりがどうなるのかは全く解らない。模擬宇宙だって高温高圧下で強制的にジャイアントインパクトを起こさせているにすぎないからな。誰か解明してくれないものだろうか。そういえばニュースで宇宙が収縮を始めたらしいと言ってたな……」

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